シルクロード日記:ウズベキスタン
5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
       
Back
SUN MON TUE WED THU FRI SAT
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        
             
 天  候:晴れ  最高高度:--m
最高気温:--度 終点高度:--m
最低気温:--度 終点緯度:--.--.--
走行距離:--km 終点経度:--.--.--
走行時間:--時間--分 宿泊:D 慶一&クリス
終着地 :ヌクス 宿泊代 :0
Next
2004年8月26日(木)
チンバイの精神病院を見学  ヌクスの救急病院で働くお医者さんと対談
チンバイの精神病院を見学 ヌクスの救急病院で働くお医者さんと対談
今日はチンバイの精神病院を見学に行く。ヌクスまで来た旅行者は普通はアラル海を見にいき、モイナックを観光したりするのだと思うが、すっかり病院めぐりになってしまった。昨日飲みすぎたので今日は遅めに起床。通訳をしてくれる女性も合流して3人でチンバイへ向かった。昨日訪ねたタヒャターシも治安が悪いとの評判らしいが、バスを降りたときの印象としてはチンバイの方が治安が悪そうだった。チンバイの中心からタクシーで病院まで行ったが運転手の勘違いで別の施設に連れてこられてしまった。身寄りのいない人のための施設ということだったがよくわからなかった。車をつかまえて中心部へ戻り、気を取り直してもう一度タクシーに乗り込む。今度はきちんと連れて行ってもらえて病院にたどり着けた。しかし昼休みなので医者がいないと言われてかなり待たされた。こちらの習慣として家に戻って昼食をとるらしい。しばらくしてようやく看護長が現れた。18年間この病院に勤めているという女性で、質問されると堂々と受け答えし、患者さんのことを愛情を込めて話す立派な婦長さんだった。その後で院長(女性)が登場してさらにいろいろな話が聞けた。この病院を以前訪問したキリスト教系団体の関係者が消毒器を寄贈してくれたといって見せてくれた。注射針を再使用している様子だった。佐藤さんによればこの国では針の再使用が普通らしい。とにかく物資が乏しいのだ。ウズベキスタンでこれだからアフリカなどは大変な状況なのだろうと思う。
病院見学から帰ると今度はヌクス市内の救急病院で働いているという女性医師アリジグルさんと会った。いろいろと話を聞いたが一番の日本との違いは看護師と医師の養成コースが分かれていないということだと思う(詳細は後記)。学歴重視のシステムによる弊害が大きいように感じた。
ようやく用件を終えて部屋へ戻り、夕飯。クリスの提案でピザを食べることになり、生地から作って食べた。とてもおいしかった。違う国の人間と暮らすと摩擦もあるだろうが、料理の幅が広がるのはメリットだと思う。

☆チンバイ(ヌクスの北50km)の精神病院
この病院で18年間働いているという看護長(女性)と話した後、院長(女性)と話した。50床のほとんどを統合失調症とてんかんの患者さんが占め、神経疾患の患者さんも若干入院している。年齢層は20代前半〜74歳。医者2名、セラピスト1名、看護士12名が働いている。病棟は開放的で昼間はベッドを外に出してそこで患者さんが時間を過ごす。訪問時も中庭にベッドを出して患者さんがくつろいでいた。夜になるとベッドを部屋に戻す。患者さんが強く希望しても屋外で寝させることはない。無断離院があった場合は鍵つきの部屋に移ってもらう。ヌクスで急性期治療を終えた患者さんが紹介されてくるケースが多く、慢性期の患者さんが多い。ベッド、シーツ、靴が足りない、拘束衣が必要だと何回も言われた。統合失調症にはHaloperidolを1.5-2mg用いる。Clozapineを採用しているが効果が期待できないという印象を持っているという。不穏時には注射する。てんかんへの治療薬はCarbamazepineしかない。この病院にはX線機器はなく、採血検査もできない(ヌクスでも状況は同じ)。入院患者さんに身体的問題が発生した場合は他院へ紹介するが敬遠されがちで、転院が決まっても当院から看護士を提供しなければならず大変である。平均在院日数は45日との返答だった。

☆医師アリジグロさんとの話から
看護師と医師は最初はコースが分かれていない。医師になるにはまず7年間大学で学び、さらに3年もしくは4年間総合的な医学(プライマリケア)を学び「general physician」となり、その後ではじめて精神科などの専門に各々が進む。そこまで勉強を続けずに途中で就職した人たちが看護師になる。
国家試験はカラ・カルパック語とウズベク語とロシア語から選択できる。どの言語で試験を受けたかで就職地域が制限されるわけではない。例えばカラ・カルパック語で合格してもタシケントで働ける。逆に、ロシア語で受かったからといってロシアで働けるわけではない。
救急病院に勤務中だがそこにはCTスキャン機器はない。MRIスキャン機器もない。薬品も不十分で問題である。救急車は機能しておりコールがあると医師が乗り込んで出動する。佐藤さんが「出動が多いというわりにはサイレンを町で聞かない」と言ったところ「車が老朽化しておりサイレンは鳴らない」ということだった。なお救急車は無料。救急搬送されてきた患者さんを医師が診察し、その病院でできうる治療(不十分)をした後で、その患者さんに経済的余裕があれば(お金持ちなら)別の病院でさらに高度な治療を受けることが可能。CTスキャンもヌクス市内に1台あり高額な費用を払えば受けられる。違法薬物の使用は日本と同じく社会問題で、昏睡状態で患者さんが搬送されてくることもまれではないアフガニスタン経由で多くの違法薬物が国内に入ってくる。錠剤に精製された違法薬物ではなく、注射による乱用が主流のため、針の使いまわしによるエイズ等の感染症の流行も大きな問題である。

CLOSE