シルクロード横断 〜トイレ事情
 


 トイレとは何でしょうか?世界の国々には様々なトイレがあります。シルクロード横断を経験して、私にとってのトイレの定義は爆発的に広がりました。東南アジアを旅行して「紙がない」「お尻を左手を使って水で洗う」など見てきましたが、今回は自転車旅行だったせいか、それと比べ物にならないほどショッキングなトイレを体験しました。走り始めて1ヶ月間ずっと下痢しっぱなしだったのでトイレは実に切実な問題。写真を見ればどこのトイレか思い出せるほどです。
 まさに『百聞は一見に如かず』とくとご覧あれ。



 

世界に名を馳せる中国のトイレ。宝鶏から80kmほど進んだところにある村の安宿で。ボットン便所だがほとんど手入れされていないので、まだ埋まっていない穴で用を足すのが流儀。隣と仕切りはなく、かなり臭い。もちろん紙はないが、みんなお尻は紙で拭くので使い終わった紙が散乱している。トイレットペーパーじゃなくてビラとかノートの切れ端ばかり。中国の田舎では普通のトイレだが、この頃の私はこのトイレに驚いていた。

天水を出発した日、昼食をごちそうしてくれた食堂で。このトイレはとてもキレイで鎖を引っ張れば水が流れる。個室になっていてきちんとドアと壁で仕切られている。紙を流すと詰まってしまうのでゴミ箱が置いてある。以後、トイレに紙を流さない習慣が帰国まで抜けなかった。もちろん水圧は不充分。ちなみにトイレは中国語で「厠所」という。

山丹の手前の集落。売店でトイレを貸してくれと頼んだら中庭の奥の方を指差された。行ってみたら便所はなく、牛がいた。壁には乾燥させるために牛糞が塗られている。牛に日本語で「隣、失礼します」と断って用を足したが通じたのだろうか。下痢便だったので私のは壁に塗られなかったと思う。

マルコ・ポーロが一年間滞在したという張掖。この街の中心の鐘楼がある交差点の有料トイレは一生忘れられない。便器の下にポリ袋がつながれており、人糞がひたすら積み重なっている。夏の猛暑の中、窓も換気扇もない密室の中で何十人分(糞?)の匂いが充満している。本当に気を失いそうになった。29歳にして初めて「鼻が曲がる」という言葉の意味を体得した。この頃は腹の調子が最悪で入院を考えた。

扉には「便后沖洗」とある。「用を足したら水を流せ」という意味で、そこら中で目にした。裏を返せば、水を流す人が少ないということ。また「きちんと穴に命中させろ」という注意書きもよくあった。あと、せっかくドアがあるのに開けっ放しで用(大便)を足す人が多いのには驚いた。中国人はいつでもどこでも煙草を吸うので用を足しながらでも煙草を吸う。長引けば隣人から煙草がまわってきたりする。

この写真を見ただけで酒泉のファーストフード店だと分かる自分を誇ってもいいものかどうか。水洗のレバーを初めて見たがもっと驚いたのは便器がTOTO製だったこと。やはり世界中どこへ行こうとファーストフード店はきれいだ。衛生的な食べ物は少ないのでがつがつ食べた。聞いた話だと、今時の都会のおしゃれな若い中国人女性はファーストフード店やデパートのトイレを使うらしい。

光り輝く「TOTO」の文字に目がくらむ。中国でこんなものを見つけるなんて奇跡に思えた。我が目を疑ったが、次の瞬間にはしっかりとカメラを構えていた。何だかとても幸せな気分になり、撮影を済ませた後で喜々として用を足した。とてつもなく贅沢なことをした気分だ。人間の幸せっていったい何だろう。

酒泉の招待所。シャワールームとなっているが排水口は下敷きを置いてあるだけだった。見かけは立派な便器だが全く水が流れない。

一本の長い溝がある。その上流から下流まで大の大人が並んでお尻を突き出してしゃがんでいる姿は、流しそうめんを彷彿とさせる。時々誰かが水を流すようだが、水圧が弱いのでその場に留まる便も多い。ここに限らず他人の便を見る機会は多かったが、観察していて気づいたのは中国人もよく下痢をしているということだ。何だか安心した。

嘉峪関関城の長城博物館内のトイレ。めちゃくちゃキレイで金のかかっていそうな建物で、ごらんの通り洋式の小便器があった。しかしTOTO製ではなく中国メーカー製だった。

砂漠を走る国道312線にはこのような排水溝があちこちにあり、よくここで昼寝をした。ここは道路から隠れるためドライバーが用を足すことが多く、人糞だらけだった。糞をどけてから昼寝をしたものだ。ジャーニーランナーの中山嘉太郎さんはこの種の排水溝を野宿に使ったらしいが、もしかしたら私は中山さんのウンコを踏んづけていたかもしれない。

 

何の変哲もない中国式トイレだが、よく見てほしい。穴が糞で埋まってしまっている。床より高い所まで糞の山ができていたが、標高をさらに高くしてあげた。日中友好に一役買った気分になった。中に山があるのはまだいい方で、トイレの入り口にまで糞ぐ溢れていて中に入れなかったトイレもあったのにはまいった。そんなトイレ、どう考えても野グソの方がましだよな。


TO BE CONTINUED.

キルギス第2の都市オシュではガスチーニッツァ(ホテル)アライに泊まった。ぐっと洋風になった感じで妙に感心してしまった。やはり水の流れは弱い。ああ、中国式トイレが懐かしい。中国に3ヶ月近くいて将来どんな国に行ってもトイレに驚くことはないだろうと自信を深めた。

本邦初公開。トルクメニスタンの首都アシュガバットにあるホテルトルクメニスタンのトイレ。この国は何でも見かけばかり立派で実は大したことない。

中国を制するものは世界を制す。ほとんど中国の紹介でしたが、やむを得ないでしょう。とにかく、この国のトイレでやっていければ世界中大丈夫だと思いました。また長期の旅をした際には続編を作るつもりです。ごきげんよう。

トップページ --- 海外ツーリング